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「先代から会長を受け、何年も経ちますが、まだまだです。」
落ち着いた口調でそう話されるのは、「大洲神伝流保存会」会長の今井要さんです。
今回、取材のお願いをさせていただいたところ、「大洲神伝流を広く、いろんな方に知っていただきたい。」と、快く引き受けていただきました。
今井さんは、地元大洲市に受け継がれる古式泳法「大洲神伝流」の保存、継承に日々力を注がれてます。
古式泳法とは、武術の一つ(水練術)として発展してきたもので、現在は全国に12の泳法が継承されており、「神伝流」はその中でも3本の指に入るほどの地域の広がりを誇っています。
また、390余年もの長い歴史を持ち、県内に継承される唯一の古式泳法とのこと。
「この泳法は扇足(あおりあし)を基本とした合戦用の泳ぎで、スピードを競う近代泳法(クロール、平泳ぎ等)とは違って、戦国時代に甲冑を身につけたまま川を渡る際に有効な泳ぎ方だったんです。」
そう話されるのを聞き、とても実践的な泳ぎ方であることに少なからず驚きました。
扇足とは、三つの型(真・行・草)を基本としたもので、これを三種の泳法(水上・水中・水底)で泳ぎ分けるため、9通りの泳ぎ方(三段九位)となるそうです。
合戦時に使用されていた泳法、それは単なる伝統ではなく、「泳ぎ」を深く知る上でも有効な方法かもしれません。
古き良きものを大切にし、それを今、未来に伝えて行く。
今井さんの「まだまだ」はこれからも続きます。
大洲神伝流保存会 会長 今井 要さん
地元大洲でも神伝流を知らない人も多いとか。成人の日に寒中水泳大会を開催し「神伝流泳法」(武者業、甲冑業等)を披露するなど、「大洲神伝流」の普及に努めています。
(左:寒中水泳大会(武者業)、右:甲冑業)
現在、「大洲神伝流」の継承者は30人ほど。定期的な水泳教室、夏の肱川で水泳学校等を開催するなど、伝統を絶やさないために継承者育成に力を注いでいます。
(左:水泳教室、右:肱川夏季水泳学校)
大洲神伝流は元和3年(1617年)頃に大洲藩初代藩主「加藤貞泰」の従兄弟である加藤主馬光尚(1617~20在藩)によって、肱川で創始された古式泳法です。古式泳法は、水練術として発展してきたもので、現在、全国に12の古式泳法が伝承されています。大洲神伝流は、県内に伝承される唯一の古式泳法で、大洲から松山へ、その後、岡山・広島・兵庫・東京等広く普及した泳法です。
平成26年2月23日、大洲神伝流は日本水泳連盟より全国13番目の古式泳法として認定されました。同時に、従来の神伝流と区別するため、「大洲神伝流」から「主馬神伝流(しゅめしんでんりゅう)」に名称を変更致しました。
指定種別 | 県指定 |
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種別 | 無形文化財 |
指定年月日 | 平成14年1月8日 |
所在地 | 大洲市大洲891-1 |
所有者 | 大洲神伝流保存会 |
(左:発祥の地(肱川)、右:寒中水泳会)